USB メモリタイプ DAC の設計
PC と USB DAC との接続は USB ケーブルで接続することになるのですが、このケーブルによっても音質が変化すると言われています。音質もさることながら、ケーブルを介することでケーブルのインピーダンスによる電源のロスやノイズの影響が考えられます。
これらの影響を低減させるために、PC のコネクタに直接接続する USB メモリタイプの DAC を設計しました。DAコンバーターにはテキサス・インスツルメンツ社製の PCM2704 を使用しています。自作なので基板はむき出しになっていますが、それもまた味があります(でも、部品のショートや静電気等、取り扱いには注意が必要になりますが)。
寸法はH:17mm、W:55mm(PC接続時突出部)、D:11mmと殆どUSBメモリ・スティックと同等サイズになっています。対応するサンプリング周波数は32KHz、44.1KHz、48KHzで、データ分解能は16bitです。電源はUSBバス・パワーとなっていますので、USBコネクタに挿すだけで使用可能です。ドライバーのインストールは不要で OS の標準ドライバーでOKです。Linux (Ubuntu 12.10)、Windows XP/Vista/7 で動作を確認しています。また、参考として iPad 2 での動作も確認しました。
小型ですが音質にこだわった点としてパターン設計(デジタル GND とアナログ GND の分離)、出力のカップリングコンデンサにはオーディオ用に設計されたニチコンのタンタル固体電解コンデンサ"MUSE"を使用しています。これにより、小型ながら力強い低音域と透明感のある音の再生を実現しています。:-)
主な仕様
主な仕様は以下になります。
項目 | 仕様 | 備考 |
---|---|---|
基板サイズ | 17mm x 55mm x 11mm | USB コネクタ含めると65mm |
DA コンバーター | PCM2704DB | テキサス・インスツルメンツ(TI) |
サンプリング周波数 | 32kHz/44.1kHz/48kHz | |
分解能 | 16bit | |
入力 I/F | USB 1.1 | USB A タイプコネクタ(オス) |
出力 I/F | ヘッドホン/ライン | Φ3.5mm ステレオミニジャック |
電源 | バスパワー(5V 500mA) |
回路図
回路図は以下になります。
部品表
使用部品のリストです。出力カップリング・コンデンサにはニチコンのオーディオ用タンタル固体電解コンデンサを使用しています。
デバイス名 | 型名 | 定数 | 定格 | リファレンス番号 |
---|---|---|---|---|
プリント基板 | MINI-USBDAC_Rev.1 | |||
DAコンバーター | PCM2704DBR | - | - | IC1 |
LED | SML-51UWT86 | - | 赤,630nm | D1 |
USB A コネクタ | - | CN1 | ||
ステレオミニジャック | ST-005 | - | CN2 | |
炭素皮膜抵抗器 | RK73H1JTTD1004F | 1MΩ | 1/10W,1% | R2,R6 |
炭素皮膜抵抗器 | RK73H1JTTD1501F | 1.5kΩ | 1/10W,1% | R1,R5,R13,R16 |
炭素皮膜抵抗器 | RK73H1JTTD22R0F | 22Ω | 1/10W,1% | R3,R4,R7,R8 |
炭素皮膜抵抗器 | RK73H1JTTD3301F | 3.3kΩ | 1/10W,1% | R9,R10,R11,R12 |
セラミックコンデンサ | GRM1882C1H220JA01D | 22pF | 50V,±5% | C4,C6 |
セラミックコンデンサ | GRM1888B11E104KA01D | 0.1uF | 25V,±10% | C1,C5,C15 |
セラミックコンデンサ | GRM188B11A105KA61D | 1uF | 10V,±10% | C7,C8,C9 |
セラミックコンデンサ | 10uF | 10V,+80%,-20% | C2,C3,C10 | |
セラミックコンデンサ | 0.015uF | 50V,±10% | C11,C12 | |
タンタル固体電解コンデンサ | F950J107MSAAM1Q2 | 100uF | 6.3V,20% | C13,C14 |
水晶発振子 | 12MHz |
レイアウト図
GND パターンはアナログ GND とデジタル GND の分離をしています。部品面にアナログ GND、半田面にデジタル GND として1点アースで接続しています。
部品面のレイアウト図です。水晶発振子のリファレンス X1 がないのと、ステレオミニジャックのリファレンスが J? となっているのはご愛嬌です。 :-)
そして半田面のレイアウト図です。
使用方法
動作の確認は Linux (Ubuntu 12.10)、Windows XP/Vista/7 で確認しています。また、参考として iPad 2 での動作も確認しています。
Linux
Ubuntu 12.10 で確認しています。PC の USB コネクタに直接挿入し、「システム設定」-「サウンド」に追加されている「アナログ出力 USB Audio DAC」を選択することで使用可能になります。
Windows Vista/7
PC の USB コネクタに直接挿入することで、ドライバがインストールされて使用することが可能になります。デバイスマネージャーでは「USB Audio DAC」として認識されます。コントロールパネルの「ハードウェアとサウンド」-「サウンド」で再生デバイスとしてスピーカーUSB Audio DACが追加されていることが確認できます。
Windows XP
PC の USB コネクタに直接挿入することで、ドライバがインストールされて使用することが可能になります。デバイスマネージャーでは「USB オーディオ デバイス」として認識されます。コントロールパネルの「サウンドとオーディオデバイス」のプロパティ「オーディオ」タブの音の再生に「USB Audio DAC」が追加されていることが確認できます。
iPad 2
iPad 2 で使用するには iPad 2 のドックコネクタを USB コネクタに変換するアダプターとセルフパワーの USB ハブが必要になります。今回、動作確認するのに使用したのは Apple 純正の Camera Connection Kit MC531ZM/A と BUFFALO の USB 2.0 4ポートハブ BSH4A01 で確認しています。
基板の概観
USB メモリタイプ DAC 基板の概観と主な搭載デバイスです。